四大学連合の学生による3つの提言

四大学連合ポストコロナ社会コンソーシアムでは、四大学連合の学生を対象に「コロナ禍の中で起きている社会問題に、我々の研究はどのように貢献することができるのか」をテーマにオンラインフィールドワークを開催し、コロナ禍によって社会に生じている分断の3領域について、みなが協働して乗り越えより良い未来を作るための行動について考えました。 今回のイベントは、コロナ禍における分断を、特定の社会で起きている遠い世界の問題ではないことを再認識し、共に生きる者として、社会問題の当事者として、難しい問題にどう対峙できるのかを、普段とはひとまわり広いサークルの中で対話し、考察する機会を作ることを趣旨に開催しました。 全2回のオンラインフィールドワークでは、四大学連合の学生をメインターゲットとして、「高齢者の孤立」、「飲食店の対応」、「大学の現場への影響」のトピックごとに現場関係者の講演を行い、社会問題を生み出す構造の複雑さについての気付きをもたらし、二次的な苦しみを生んでいる現在のコロナ対策をより「社会に優しく実装」することはどうしたらできるかという視点でグループワークを行い、各トピックに関する考察をまとめ、発表を行いました。 このイベントの成果は、未来を作る若者が、自分たちが問題解決者の一員として、研究を通じ、分野を超えて協働し社会問題と対峙して生きていくためのアイデアを生み出したことです。その成果を、本コンソーシアムはイベントに参加した学生とともに、3つの提言にまとめました。

学生提言1:ポストコロナ社会を見据えた大学生活のあり方に関する四大学連合の学生から自大学への提言

1 四大学連合の学生が見たコロナ禍における大学生活の現状

  • 大学生の課外活動(例えば、サークル活動、部活動、インターン、アルバイト)が「不要不急」の事柄として軽視されていないか。
  • 講義について、オンラインのみでは学生同士、教員との交流が難しい。一方、完全に対面のみに戻すことも感染リスクがある。
  • 学生同士の雑談をするような交流の場がない。
  • 大学間の感染対策の度合いのバラツキ(例えば、キャンパスに入構できない大学がある一方で、対面講義を実施している大学がある等)があり、大学生間で学生生活について不平等がある

2 ポストコロナ社会を見据えた大学生活のあり方に関する四大学連合の学生から大学への提言

  1. 課外活動をすることに対して、感染対策を条件に、より柔軟に対応(許可)する。
  2. 授業を対面とオンラインのハイブリッド型にする。 例えば、対面授業とオンライン授業をそれぞれ曜日や午前・午後ごとにまとめて、授業の実施形態等によって細分化する。
  3. 大学がより学生をつなげる、対面およびオンラインの語り場のようなプラットフォームを作る。(例えば、「なんでも相談窓口」等を設ける。)
  4. 感染対策に関する大学ごとの対応の違いをエビデンスに基づいて解消すべく、大学同士で感染対策に関するベーシックなガイドラインを作成する。
  5. 感染状況別のルール(※)を設定し、それに基づき学生が対策案を作成し、課外活動を実行できるようにする。 ※ルールについては、数値化したマニュアル(活動において15人未満、間隔2m以上、マスク着用等)ではなく、コンテクスト(活動内容ごとに、大人数での3密を避けて飛沫を防ぐ等)で提示する。このようにすることで、活動ごとに対策を講じることで活動の自由度が高まり、学生の自ら考える力を養うことにもつながる。また、教職員の手続きを軽減し、本来の業務に時間を使う。

学生提言2:コロナ禍における飲食店の感染対策に関する四大学連合の学生からの提言

1 コロナ禍における飲食店の感染対策に関する四大学連合の学生の問題意識

  • 緊急事態宣言の下、飲食店はアルコール飲料の提供停止や時短営業など厳しい経営を強いられている。
  • 都道府県からの協力金の支払いはあるは経営が日々悪化している飲食店も少なくない。
  • 自粛に協力しない飲食店を批判したり、罰したりするだけでは社会が息苦しくなってしまうのではないか。

2 コロナ禍における飲食店の感染対策に関する四大学連合の学生からの提言 (1)パーティションの活用方法の開発と推進 課題:飲食店におけるコミュニケーションの数が減った。

  • 飲食店はただ飲んだり食べたりする場所ではなかった。
  • 不自由を楽しめる仕組みがあっても良い

課題解決に向けた提言 ①パーティションにエンターテインメント性を持たせる。 例えば、以下のようにパーティションを活用する。

  • ボードゲームにして遊べるようにする
  • 顔を写してプリクラのようにする。
  • 掲示板やSNSのように活用する。 掲示板:スマホでコメントを入れると、アクリル板の液晶にながれてくるようなイメージ
  • 厚みのあるアクリル板の中に水と魚を入れてアクアリウム化する。

②ソーシャルディスタンスを保つよう客席の間にスペースを空けたとき、そのスペースに調理器具をおいて、客が一部調理もできるような工夫を行う。BBQのような調理する楽しさを提供しつつも、人件費の削減につながるのではないか。 予算

  • パーティションは大量発注することでコストを抑えられる。
  • 飲食店への集客を進めて補助金だけに頼らず回せるようにする。

(2)飲食店のホワイトリスト化 課題:感染防止に努力した店舗が報われていない

  • 飲食店の努力をくみとって評価する仕組みがないのではないか。
  • 現行の第三者認証制度は、自治体職員が評価の主体となっており、どちらかと言うと、感染対策を順守していない店を罰する仕組みとなっている。
  • 感染対策を順守している店をほめるポジティブな仕組みが必要なのではないか。
  • 感染対策を順守している店舗としていない店舗の間の不公平感をどうするか。

課題解決に向けた提言

  1. 山梨モデル(※)を拡張する。 例えば、グルメレビューサイトのように客が評価する仕組みを導入する。 ※行政が飲食店の安全性を確認する第三者認証制度である、所謂「山梨モデル」 やまなしグリーン・ゾーン構想
  2. ネガティブな批判に代えてホワイトリスト化方式(感染対策に積極的に取り組む店舗を評価する仕組み)を導入する。
  3. (一般客のほかに)調査員としてコロナ禍で失業した人などを臨時に雇用して活用する。

学生提言3:四大学連合の学生からの提言を踏まえた「人々の交流を妨げないパーティション」に関する四大学連合の学生による研究企画の提案

1 研究企画の目的

  • Covid-19の感染予防策で用いられているパーティションに機能を追加することによって、パーティションを介した新しいコミュニケーションを提案する。
  • 作製した新規パーティションを飲食店に導入し、飛沫対策と心的負担の無い交流の両立を実現する。

2 コロナ禍における現状

  • 客がマスクを外して会話をする飲食店でのCovid-19感染予防策は特に重要である。しかし、パーティションを介した会話はストレスとなるため、人が交流することを重要視する飲食店の中には飛沫対策を実施していない店がある。交流を妨げない飛沫防止対策を普及させることが必要である。
  • 比較的ストレスを感じさせない体裁の整ったパーティションや機能性パーティションは既に存在するが高価であるため、飲食店が大量に導入することは難しい。新規パーティションは安価な方がいい。

3 既存のパーティションに関する課題

  • 音が遮断されてしまう
  • 光が反射する
  • 物理的に遮断される
  • 光が屈折する(大人数で利用が困難)
  • 自由変形が難しい
  • 使いながら形を変えられない
  • 高価
  • スペースが必要

4 「人々の交流を妨げないパーティション」に関する研究企画の提案内容 (1)簡易的な機能追加

  • 両側からシールを張ってボードゲームを楽しむ
  • 水性マジックでパーティション越しに相手の顔に落書き

(2)通音、遮音機能フィルムを用いる

  • 話し相手との間に置くパーティションには通音性を持たせる
  • 隣の席との間に置くパーティションには遮音性を持たせる [既存製品]あり

(3)透明液晶を用いる

  • 自分のスマートフォンを画面に接続
  • ひとり飲みで映画鑑賞、ビデオ通話での交流、ネットサーフィン
  • 全国のパーティションと音声・チャット接続、新しい交流を生み出す [既存製品]あり

(4)音を通す透明ディスプレイ

  • ディスプレイに直接書き込む
  • 「テーマ」ハイブリット型のコミュニケーション、リアルとバーチャルを混ぜる

(5)デザイン性を上げる

  • パーティションが安っぽいと、料理がおいしくても満足度が減少する
  • パーティションによって閉塞的になる空間を、プライベート空間と捉えたい [既存製品]あり

(6)レゴの様なパーティション

  • 環境に合わせて形を変えられる

(7)空気で遮断する

  • 殺菌機能も追加する

四大学連合の学生による3つの提言に対する専門家のコメント

新型コロナウイルスの流行が始まって1年以上が経過しています。ワクチンが開発されるなど大きな進歩もありますが、まだ当面は対応が続きます。その中で生じている社会問題には専門性を超えて広く協働し、乗り越えていく必要があります。 感染対策とは本来、感染症流行による制約がある中で様々な活動を安全にできるようにするためのものです。感染対策の基本を理解し、技術の進歩を活用しながら、何かをできるようにしていこうとする今回の提言は意義深いものと考えます。

東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 統合臨床感染症学分野 具 芳明

PAGETOP
Copyright © 四大学連合 All Rights Reserved.
Powered by WordPress & BizVektor Theme by Vektor,Inc. technology.